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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)10601号 判決

原告 東京信用保証協会

被告 アサヒゴーシヨウ株式会社

主文

東京地方裁判所が同庁昭和四九年(ケ)第八三一号不動産任意競売事件につき作成した昭和五〇年一二月八日付別紙第一売却代金交付計算書のうち順位4、5の部分を別紙第二売却代金交付計算書のとおり変更する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

主文同旨の判決

二  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  東京地方裁判所は、被告の申立により当時訴外村岡秀俊(以下村岡という。)の所有であつた別紙物件目録(一)、(二)記載の各不動産(以下本件不動産という。)につき昭和四九年(ケ)第八三一号事件として任意競売手続を開始し、その後本件不動産競売の結果、昭和五〇年一二月八日その売却代金につき別紙第一売却代金交付計算書を作成した。

2  しかしながら、右計算書には、次に述べるように、順位4の原告の損害金についての債権額および求償元金、損害金についての交付額を誤つた過誤があるので、右計算書のうち順位4、5の部分は別紙第二売却代金交付計算書のとおり変更されるべきである。

(1)  村岡は、訴外東京施設工業株式会社(以下東京施設工業という。)が訴外株式会社協和銀行(以下協和銀行ともいう。)との銀行取引により負担する債務の支払を担保するため、昭和四六年四月二六日協和銀行に対して連帯保証をなし、次いで昭和四七年四月一七日その所有にかかる本件不動産に極度額金一、〇〇〇万円の根抵当権(以下本件根抵当権という。)を設定し、東京法務局渋谷出張所昭和四七年五月一七日受付第二二二六五号をもつて右根抵当権設定登記を経由した。

(2)  協和銀行は東京施設工業に対し左記のとおり金員を貸付けた。

(イ) 貸付年月日 昭和四六年一二月九日

貸付金額 金一五〇万円

弁済の期限と方法 昭和四七年七月から昭和四九年一二月まで毎月末日(但し、最終回は八日)限り金五万円宛分割弁済

遅延損害金 年一八パーセント

特約 東京施設工業が協和銀行に対する他の債務の支払を一回でも怠つたときは当然に期限の利益を失う

(ロ) 貸付年月日 昭和四七年四月二五日

貸付金額 金五〇〇万円

弁済の期限と方法 昭和四七年一一月から昭和五〇年四月まで毎月二四日限り金一七万円宛(但し、最終回は金七万円)分割弁済

遅延損害金 年一八パーセント

特約 (イ)のそれと同じ

(ハ) 貸付年月日 昭和四七年一二月二八日

貸付金額 金三〇〇万円

弁済の期限と方法 昭和四八年六月二七日限り一括弁済

遅延損害金 年一八パーセント

(3)  原告は、(2) の(イ)の貸金債権(以下(イ)の貸金債権という。)につき昭和四六年一一月一七日、同(ロ)の貸金債権(以下(ロ)の貸金債権という。)につき昭和四七年三月一一日、同(ハ)の貸金債権(以下(ハ)の貸金債権という。)につき同年一二月一九日東京施設工業から各保証の委託を受けたので、これを承諾し、(イ)の貸金債権については昭和四六年一二月二日、(ロ)の貸金債権については昭和四七年四月二四日、(ハ)の貸金債権については同年一二月二六日協和銀行に対し各連帯保証をなした。

(4)  東京施設工業が原告に対し前項の各保証委託をなすに当り、共同保証人兼物上保証人である村岡は原告との間において、(イ)原告が東京施設工業に代り前記各貸金債権につき弁済したときは、民法第五〇一条第五号の規定にかかわらず、村岡は原告に対し右代位弁済金額全額の求償に応じるものとし、原告はその求償権の範囲内で協和銀行に代位し同銀行が本件不動産につき有していた本件根抵当権その他の権利の全部を行使しうるものとする旨および(ロ)村岡は右求償元金(代位弁済金)に対しては民法第四四二条第二項の規定にかかわらず年一八・二五パーセントの割合による遅延損害金を原告に支払うものとする旨の各特約(以下前者を本件(イ)の特約、後者を本件(ロ)の特約という。)を締結した。

(5)  ところが、東京施設工業は(ハ)の貸金債権につき弁済期日である昭和四八年六月二七日弁済を怠つたので、前記約旨により(イ)および(ロ)の各貸金債権につき当然期限の利益を失い、債務金の残額を即時に支払うべき義務を負うに至つた。そして本件根抵当権は同年七月三一日その元本が確定したので、東京法務局渋谷出張所昭和四八年九月二九日受付第四二五二〇号をもつてその旨の登記がなされた。

(6)  原告は、昭和四八年一〇月九日協和銀行に対し前記各貸金債権につき左記の各金員合計金六二七万五、四七五円を代位弁済し、その結果東京施設工業および村岡に対し同額の求償権を取得した。

(イ) (イ)の貸金債権につき 金九五万円

内訳 残元金九五万円

(ロ) (ロ)の貸金債権につき 金三八二万四、一九六円

内訳 残元金三八一万円

損害金一万四、一九六円(残元金三八一万円に対する昭和四八年七月二五日から同年八月一〇日まで約定の損害金率の範囲内である年八パーセントの割合による)

(ハ) (ハ)の貸金債権につき 金一五〇万一、二七九円

内訳 残元金一四八万六、九一五円

損害金二、九五八円(残元金一五〇万円に対する昭和四八年六月二八日から同年七月六日まで約定の損害金率の範囲内である年八パーセントの割合による)

損害金一万一、四〇六円(残元金一四八万六、九一五円に対する昭和四八年七月七日から同年八月一〇日まで右同割合による)

以上(イ)、(ロ)、(ハ)の合計金六二七万五、四七五円

(7)  よつて、原告は本件根抵当権(およびその被担保債権)を代位取得し、東京法務局渋谷出張所昭和四八年一〇月九日受付第四四〇〇〇号をもつて右根抵当権移転登記を経由した。

(8)  その後東京施設工業は原告に対し(6) の(イ)の金員につき金四万円を、同(ロ)の金員につき金一二万円を、同(ハ)の金員につき金四万円をそれぞれ支払つたので、原告の東京施設工業および村岡に対する前記求償権の残額は金六〇七万五、四七五円となつた。

(9)  以上の事実によれば、原告は本件根抵当権に基づき本件不動産の売却代金から(8) の求償残元金六〇七万五、四七五円およびこれに対する代位弁済の翌日である昭和四八年一〇月一〇日から配当期日である昭和五〇年一二月九日まで本件(ロ)の特約にかかる損害金率の範囲内である年一八パーセントの割合による遅延損害金二三六万九、九三三円につき優先弁済を受けられる筈であるから、順位4の原告の求償元金および損害金につきその債権額をそれぞれ金六〇七万五、四七四円および金七九万〇、九七六円とし、その交付額をそれぞれ右各債権額の半額とする別紙第一売却代金交付計算書には前記過誤があるものというべきである。

3  そこで原告は右事件の配当期日である昭和五〇年一二月九日別紙第一売却代金交付計算書につき異議を申立てたが、債権者たる被告が右異議を承認しないため、右異議は完結しなかつた。

4  よつて原告は別紙第一売却代金交付計算書のうち順位4、5の部分を別紙第二売却代金交付計算書のとおり変更すべきことを求めるため本訴請求に及んだ。

二  請求原因に対する被告の答弁

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の冒頭の事実は争う。同2の(1) ないし(3) 、(5) 、(7) の各事実はいずれも認める。同2の(4) の事実中、東京施設工業が原告に対し(ハ)の貸金債権についての保証委託をなすに当り、共同保証人兼物上保証人である村岡が原告との間において本件(イ)、(ロ)の各特約を締結したことは認めるが、東京施設工業が原告に対し(イ)、(ロ)の各貸金債権についての各保証委託をなすに当り、右村岡が原告との間において本件(イ)、(ロ)の各特約を締結したとの事実は否認する。同2の(6) の事実中、原告が村岡に対し金六二七万五、四七五円の求償権を取得したとの事実は否認するが、その余の事実は認める。同2の(8) の事実中、原告の村岡に対する求償権の残額が金六〇七万五、四七五円となつたとの事実は否認するが、その余の事実は認める。同2の(9) の事実は争う。

3  同3の事実は認める。

三  被告の主張

1  求償権および代位の範囲に関する民法第四四二条第二項および同法第五〇一条第五号に反する特約は、その性質上、当事者間においては有効であるが、それが第三者の利益を害するときはこれをもつてその第三者に対抗することができないものと解すべきところ、本件(イ)、(ロ)の各特約は第三者である被告の利益を害するものであるから、原告は本件(イ)、(ロ)の各特約の存在をもつて被告に対抗することができないものというべきである。

2  本件(イ)の特約は、それが相手方にとり不利益な内容であるにもかかわらず、経済的強者である原告が経済的弱者である村岡に対しその優越せる立場を利用して一方的にこれを押しつけ、村岡をしてやむなくこれが締結を承諾するに至らしめたものであるから、信義誠実の原則または公序良俗に違反し無効である。

四  被告の主張に対する原告の反論等

1  被告の主張1の原告は本件(イ)、(ロ)の各特約の存在をもつて被告に対抗することができない旨の主張は争う。民法第四四二条第二項および同法第五〇一条第五号が任意規定であることは被告の自陳するとおりであつて、これらの規定に反する本件(イ)、(ロ)の各特約の効力を否定すべき理由は何ら存在しないから、本件(イ)、(ロ)の各特約は有効であるというほかはない。被告は本件(イ)の特約の効力を被告との間において否定する根拠として右特約が第三者である被告の利益を害することを主張するけれども、本件(イ)の特約は何ら被告の利益を害するものではない。すなわち、被告は、本件不動産につき本件根抵当権の設定を受けた協和銀行の後順位担保権者であり、元来同銀行がその被担保債権の満足を図るため本件不動産につき本件根抵当権全部を行使することを法律上甘受すべき立場にあるから、原告が、代位弁済の結果本件(イ)の特約に基づき同銀行に代位して同銀行の被担保債権の限度で本件不動産につき本件根抵当権全部を行使することになつたとしても、それは右の立場上当然に甘受すべき事柄であつて、そのことにより利益を害されたものということはできない。従つて被告の利益が害されることを理由に本件(イ)の特約の効力を被告との間において否定すべきものとする被告の主張はその前提を欠き理由がない。

2  同2の事実は否認する。

第三証拠関係〈省略〉

理由

一  請求原因1の事実、同2の(1) ないし(3) の各事実、同2の(4) の事実中、東京施設工業が原告に対し(ハ)の貸金債権についての保証委託をなすに当り、共同保証人兼物上保証人である村岡が原告との間において本件(イ)、(ロ)の各特約を締結したとの事実、同2の(5) の事実、同2の(6) の事実中、原告がその主張の日協和銀行に対し前記各貸金債権につきその主張の合計金六二七万五、四七五円を代位弁済したとの事実、同2の(7) の事実、同2の(8) の事実中、その後東京施設工業が原告に対し原告主張のとおり金員の支払をなしたとの事実、同3の事実はいずれも当事者間に争いがない。

二  成立に争いない甲第三ないし第一四号証、証人梶昭男の証言(第一、二回)ならびに弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。

(1)  原告は信用保証協会法に基づき中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務として設立された法人であり、原告が中小企業者等から保証委託を受ける場合の基本的な契約条件については、原告において、多数の相手と画一的な取引をする必要上、統一的契約書用紙に印刷された契約約款の形で定めているため、中小企業者等が原告に対し保証委託をなそうとするときは、右契約書用紙を使用し原告の定めた右契約約款を承諾する形で右契約が締結されるのが通例となつていること。

(2)  東京施設工業が前記のとおり原告に対し(イ)、(ロ)の各貸金債権についての各保証委託をなした際も、右の例にならい、東京施設工業およびその連帯保証人(協和銀行に対する共同保証人兼物上保証人)である村岡は、右契約書用紙を使用し、原告の定めた右契約約款を承諾する形で右各契約を締結したものであるが、右各契約書(甲第四号証、第八号証)には、(イ)「保証人は、被保証人の協会に対する求償債務について被保証人と連帯し、かつ、保証人相互間に連帯して弁済の責に任じるものとする。」(第五条第四項)、(ロ)「保証人は、被保証債務を弁済しても、協会に対し求償権を有しないものとする。」(同条第五項)との不動文字として印刷された各契約条項が置かれていること。

(3)  原告は、前記のような法人としてその事業の運営につき受ける公的規制との関連上、その事業の運営方針として、本件の如く主たる債務につき原告の保証の外に第三者による保証および物上保証がなされている場合においては、原告は、代位弁済の結果、民法第五〇一条第五号の規定にかかわらず右共同保証人および物上保証人に対しその代位弁済金額の全額につき求償および代位をなしうるものとすることが必要とされるため、右のような求償および代位を法律上可能ならしめる特約を定める意図の下に、(2) の(イ)、(ロ)の各条項を前記契約約款中に置いたものであること。

(4)  しかしながら、その後右各条項が本件(イ)の特約を定めたものとは解されないとする裁判例が出現するに至つたため、原告は、右各条項を改め契約約款の文言上本件(イ)の特約を定める趣旨であることを一義的に明確にした新しい書式の統一的契約書用紙(甲第一二号証の原形)を採用するに至つたこと。

(5)  村岡は、東京施設工業の代表取締役たる地位にある者であり、そのような立場にあることから、前記のとおり、東京施設工業が協和銀行との銀行取引により負担する債務の支払を担保するため同銀行に対し連帯保証をなすとともにその所有にかかる本件不動産に本件根抵当権を設定し、かつ、東京施設工業が原告に対し(イ)、(ロ)、(ハ)の各貸金債権についての各保証委託をなすに当つては、東京施設工業の連帯保証人となり、東京施設工業とともに原告の用意した前記各契約書用紙を使用して原告との間に右各契約を締結したものであり、(ハ)の貸金債権についての保証委託の際には(4) で述べた新書式による契約書用紙が使用されたが、村岡においては右契約書用紙に印刷された前記契約約款を何ら異議なく承諾したものであること。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、東京施設工業が原告に対し(イ)、(ロ)の各貸金債権についての各保証委託をなすに当り、共同保証人兼物上保証人である村岡は原告との間において黙示的に本件(イ)の特約を締結した(ちなみに、(2) の(イ)、(ロ)の各契約条項は本件(イ)の特約そのものを定めたものではない。)ものと認めるのが相当である。

三  前顕甲第四号証、同第八号証、証人梶昭男の証言(第一、二回)ならびに弁論の全趣旨によれば、東京施設工業が原告に対し(イ)、(ロ)の各貸金債権についての各保証委託をなすに当り、共同保証人兼物上保証人である村岡が原告との間において本件(ロ)の特約を締結したことを認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

四  ところで、被告は原告は本件(イ)、(ロ)の各特約の存在をもつて被告に対抗することができない旨主張する(被告の主張1)ので、以下この点につき考えてみるに、本件(イ)、(ロ)の各特約がそれぞれその適用の排除を目的とする民法第五〇一条第五号および同法第四四二条第二項は被告も自陳するとおり任意規定であることが明らかであつて、本件(イ)、(ロ)の各特約の効力を否定すべき合理的理由を見出すことはできないから、本件(イ)、(ロ)の各特約は有効であるというほかはない。被告は本件(イ)、(ロ)の各特約の効力を被告との間において否定すべき理由として本件(イ)、(ロ)の各特約が第三者である被告の利益を害することを主張するけれども、本件(イ)、(ロ)の各特約は何ら被告の利益を害するものではない。すなわち、まず、本件(イ)の特約についてみるに、被告は、本件不動産につき本件根抵当権の設定を受けた協和銀行の後順位担保権者であり、元来同銀行がその被担保債権の満足を図るため本件不動産につき本件根抵当権全部を行使することを甘受すべき立場にあるから、原告が、代位弁済の結果、本件(イ)の特約に基づき同銀行に代位して同銀行の有していた被担保債権の限度で本件不動産につき本件根抵当権全部を行使することになつたとしても、被告はこのことにより何ら利益を害されたものということはできない。もつとも、本件(イ)の特約が存在しない場合には、原告が民法第五〇一条第五号の規定に基づき共同保証人および物上保証人の頭数に応じ本件においては二分の一の範囲においてのみ同銀行に代位しうるにすぎないため、被告は本件(イ)の特約が存在する場合に比し本件不動産からより多額の配当を受けうるという利益があるが、被告の右利益は法律上本来的に期待することのできない単なる反射的利益にすぎないものというべきであり、従つて本件(イ)の特約の存在により被告の右利益が失われることを理由として本件(イ)の特約の効力を被告との間において否定することは不合理であるといわなければならない。また、本件(ロ)の特約も、仮にこれを有効とした場合、原告は本件(ロ)の特約に基づき民法第四四二条第二項の定める法定利息より多額の損害金につき本件根抵当権を行使しうることになるけれども、このことは、右権利行使の限度が弁済者代位としての性質上当然に右損害金と求償元金との合計額につき代位取得された協和銀行の被担保債権の額を最高限度とするものである以上、本件(イ)の特約につき述べたと同様の意味において、前記立場にある被告の当然甘受すべき事柄であつて、これが被告の利益を害するものということはできない。よつて、被告の右主張は理由がない。

五  被告はまた本件(イ)の特約が信義誠実の原則または公序良俗に違反し無効である旨主張する(被告の主張2)けれども、本件全証拠によるも、被告の右主張を肯認するに足りる事実を認めるに足りない。

六  以上説示認定の事実によれば、原告は、本件(イ)、(ロ)の各特約に基づき、前記代位弁済の結果、共同保証人兼物上保証人である村岡に対し代位弁済金額六二七万五、四七五円全額およびこれに対する代位弁済の日の翌日である昭和四八年一〇月一〇日から完済まで約定の損害金率の範囲内であるその主張の年一八パーセントの割合による遅延損害金につき求償権を取得し、かつ、右求償権の範囲内において協和銀行に代位し、同銀行が有していた貸金残元金六二四万六、九一五円とこれに対する右同期間約定の右同割合による遅延損害金および代位弁済の日までに発生した遅延損害金二万八、五六〇円の被担保債権およびこれについての本件根抵当権の全部を行使できることになつたものというべきであり、原告が前記求償権の額からその後東京施設工業から弁済を受けたことを自陳する合計金二〇万円を控除した残額として本訴において優先弁済を主張する求償残元金六〇七万五、四七五円および遅延損害金二三六万九、九三三円が右代位取得にかかる本件根抵当権の被担保債権額の範囲内であることは計数上明らかであるから、原告は本件根抵当権に基づき右主張の各金額の全額につき本件不動産から優先弁済を受けることができるものというべきである。

してみれば、本件第一売却代金交付計算書には原告主張の過誤があるものというべく、右計算書のうち順位4、5の部分を別紙第二売却代金交付計算書のとおり変更を求める原告の請求は理由がある。

七  よつて、原告の請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松尾政行)

(別紙)第一・第二売却代金交付計算書〈省略〉

(別紙)物件目録〈省略〉

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